私は大学卒業後、国税専門官採用試験を受けて合格し「東京国税局」の税務調査官として2年間勤務しました。現在は退職し、ファイナンシャルプランナーとして資産設計のアドバイスなどを行なう仕事をしています。
コロナ不況で税金の支払いもままならない方もいらっしゃるでしょう。そこで、こんなときだからこそ税務調査の話を少々……。元国税局の調査官が「税務調査の実態」をお話しいたします。
■税務調査官が来るところ、来ないところ
税務調査官は公務員です。仕事については上からの評価があり、その評価は隠されていた税金の金額で決まります。
例外として、今まで目をつけていたが見つからない・難しい、と言われている脱税なら金額が大きくなくても評価はアップします。
そしてもちろん昇進やボーナスにも関わるので、何も取れない赤字のところや消費税が課税されないところには行きません(課税されているなら消費税と法人税や所得税を二重でとれるため)。
逆に、今年になっていきなり利益が増えたところ、事業規模が大きいところを見せしめとして叩きます。事業規模から鑑みてあり得ないレベルでの役員賞与の変更や備品の購入を頻繁にするようなところ、またIT系は隠せてしまうことが多いのでかなり狙い目。世間的に目立っているところを叩くのが鉄則でした。
当然ながら、犯罪がらみのものを摘発し社会問題にもなれば、摘発した個人だけではなく社会的に脱税への圧となります。
とにかく、マスコミが喜ぶような相手を挙げることができれば調査官の大手柄になり評価アップという感じです。
今年は税収ダウンが見込まれるので、コロナ不況で苦しむ中、業績が良い(もしくは変わらない)事業所は少ないので狙われやすくなるでしょう。
ちなみに、助成金のたぐいなども連発すると目をつけられる傾向にあります。
■実際に調査官が来た場合
税務署はすべて分かって来ています。隠せることなどありません。そこで聞かれたことはちゃんと答え、後はなにも喋らないのが重要です。調査官が言ったことは絶対なので反論せず、逆に「どうぞ調べてください」というスタンスが一番です。
また、隠蔽がひとつでも見つかると、ほかにも隠蔽してるんだろうということで血眼になります。そんなときは「知らなかったんです。すぐ修正申告して納税します」と言うのが得策です。
ちなみに、税理士は10万円ほど出せば立ち会いもしますが、役立つか役立たないかは税理士次第で、はっきり言って安かろう悪かろうだと思います。役に立たない税理士にはまったく意味がありません。
なお今年は、コロナ終息宣言が出るまでは密なので税務調査できないのと、申告・納付期限も緩和中なので取るに取れないのが現状。そのため、コロナで儲けて2020年度に初申告する人よりも、消費税課税事業主になる2022年度あたりで申告する人が狙われると思います。
自分が担当税務署の中で目立っているくらいの売上があったと思うなら、税理士の目処を立てておいたほうがいいでしょう。
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